サンフランシスコを10倍楽しむためのアーバニストキット!"The Urbanist SF" ツアー体験談

San Francisco Interview ・ Jul 19, 2018

先日、以前から気になっていたサンフランシスコのツアー、The Urbanist SFに参加してきました。サンフランシスコほどの大都市になると街歩きツアーは数えきれないほどありますが、このツアーが特徴的なのは、サンフランシスコを楽しむ遊歩者のための「アーバニストキット」が用意されていること。「アーバニストキット」の中には、イラストマップや現地の地図で作られた財布、サンフランシスコの美味しい水道水を楽しむためのマイボトル、ローカルマーケットだけでゲット出来るアーモンドなど、小さな工夫が凝らされたものばかり。ローカルな魅力がぎっしり詰まったキットを開けて、それぞれのアイテムの背景や作り手のストーリーを聞きながら、どことない街の日常を眺めながら街を歩く。The Urbanist SFは、そんな街好きにはたまらないツアーです。


"The Urbanist SF"創始者のNate Mahoney氏。ミッション地区の屋外壁画をバックグランドに。

このツアーの創始者であり「アーバニストキット」のキュレーションを勤めたNate Mahoney氏が注目しているのは、人間中心設計のリサーチと都市における人々の経験。普段はUXリサーチャーとして働きつつ、彼自身のパーソナルな経験から、独自にサイドプロジェクトとしてこのツアーを開始しました。

アメリカ郊外の車社会に生まれ育ったNate Mahoney氏は、サンフランシスコに引っ越してきてからとにかく街を歩き回ったと言います。目的もなく、ふらふらと街を歩き回り、地元の人と話をするなかで出会ったのは、19世紀パリで生まれた、ボードレールによるフラヌールという概念でした。この概念に影響を受けたMahoney氏は、21世紀のサンフランシスコで、このフラヌールをひたすら実践 — 目的もなく歩き回ることで、都市を経験し、学ぶことを繰り返してきました。


そんななか、地元の人々の生活や物語に目を向けはじめ、彼らと話はじめた結果、このプロジェクトのアイディアの原型が生まれます。サンフランシスコの街をよりローカルに楽しむための「アーバニストキット」のアイテム1つ1つは、地元のデザイナーやブランドとコラボレーションしたもの。それぞれを手に取りながら街を歩くことで、地元のローカルなストーリーに耳を傾けることができます。

「アーバニストキット」を手に歩く、ミッション地区

1時間のツアーでハイライトされたのは、歴史的にヒスパニック系住民が多く住むミッション地区。サンフランシスコは、1776年にスペイン人のフランシスコ会修道士によって創立されましたが、このミッション地区がその始まり。サンフランシスコ市内で最も古い地区です。


アーティストの多いエリアでもあり、屋外壁画などが有名でもあります。北部のダウンタウンに比べて比較的物価は安いものの、昨今は人気上昇のため、住民やショップの入れ替わりなど大きく変化している地区です。

サンフランシスコのほぼ全ての地区を歩き回ったMahoney氏は、最終的にミッション地区を選んだ理由を「この地区には面白いことが自然と多いから」と説明します。街歩きをしているなかで、面白いと思ったお店に飛び込んだり、地元の人にインタビューをすることで、じわじわとコラボレーターを見つけ、キットに入れるアイテムを1つ1つ検討していきました。


以下、ツアーで訪れたミッション地区の面白いスポットをいくつか紹介します。

  • Philz coffee
    2002年にオープンしたPhilz coffeeは、ベイエリアのサードウェーブ・コーヒーブームに大きく貢献した重要なローカルカフェ。古いマーケットを改修し、定期的にコミュニティイベントなどを開催することで、地元コミュニティと非常に強い関係を築いてきたと言います。現在はサンフランシスコ中に店舗を拡大したものの、元祖であるミッション地区のPhilz coffeeは、今でも重要な意味を持っているとのことです。

  • 屋外壁画
    Balmy Alley、Clarion Alley他、後に紹介するWomen’s buildingでもアーティストの巨大な屋外壁画を楽しむことができます。







  • Colpa press
    ミッション地区に位置する、インディペントのマガジンやブックを出版する小さなプリントショップ。地元のアーティストを支援するプラットフォームとして、ギャラリーやワークショップの開催なども行なっています。Mahoney氏がこのプリントショップで行なったインタビューは、Youtubeで確認することができます。

    ここのプリントショップでは、「アーバニストキット」に入っているイラストレーションマップが印刷されました。デザインは、地元のアーティストCarissa Potterさん。彼女のプロジェクトの1つであるPeople I’ve lovedのイラストレーションは必見です。

  • Timbuk2
    1989年に創立のバックの地元ブランド、Timbuk2はMahoney氏のお気に入り。訪れた店舗兼工房は必見です。


  • The Women’s building
    1971年に創立したThe Women’s buildingは、サンフランシスコで初めて女性によって運営されたコミュニティ・センター。建物の外観は、全てアーティストの屋外壁画に覆われています。

  • Dolores Park
    ツアーの締めくくりはサンフランシスコの定番、ミッション・ドロレス公園。ミッション地区とノイバレー地区に挟まれた小高い丘にある公園で、サンフランシスコの街並みを一望することができます。公園の芝生に寝そべって、ピクニックをしたりダンスをしたり、それぞれの時間を楽しむ人々。日本でも見てみたい風景です。


都市の人間中心デザインに向けて

サンフランシスコを10倍楽しむためのアイテムが詰まった「アーバニストキット」&ツアー。今後は、ロサンゼルスやニューヨークなど、アメリカの他の大都市への展開も考えているそう。それでも一番大切なのは、とにかく街を歩くこと。その場所の物語に耳を傾けて、魅力を発見し、自分の足でコラボレーターを見つけること。「だからとても時間と労力がかかるんだよね」と笑いながら話すMahoney氏が大切にしているのは、私たち一人ひとりの都市における経験と住みやすさ、つまり都市の人間中心デザインです。